看護師免許証が欲しい!

「看護師免許証」を手にするまでの学生を見守っている看護教員のブログです。

臨地実習の中で学ぶこと

こんにちは、エートスです。

学内実習、オンライン実習で学習困難な内容

 私の勤めている看護学校は、2年生の実習の真っ只中です。

 とは言っても、新型コロナウイルス感染症が流行する現在、臨地実習には行けていませんので、学校内及びオンラインでの実習となっています。

 

 そのため、知識面は事例・ペーパーペイシェントでの学びを使い、技術面はロールプレイやシミュレーターを用いて学習を深めています。

 

 現在の病院や高齢者施設等に行けない事をこのような形で補うようにしています。

 しかし、こういった方法でも学習することが難しいのがコミュニケーション技術と精神科看護学領域です。

 もちろん他にも細かい点がありますが、大きくはこの2点が臨地実習でないと難しいでしょう。

 

 精神科看護学領域は3年生で臨地実習の計画があるので、目下のところ2年生に欠けているなと感じるのは臨床の場で患者とコミュニケーションとることが不足していると言えます。

 単に話を聞いて患者の状態を把握するというコミュニケーションばかりがコミュニケーションではありません。コミュニケーションを通して学生は多くの学びが得られます。

 

 

イライラしている患者、怒り出す患者とのコミュニケーション

 学内の演習で患者役の学生もしくは教員が、突然看護師役の学生を「何もしてほしくない、出て行って」と強い口調で言い出したら、問題となってしまうでしょう。

 しかし、臨地実習において、学生が受け持っている患者から強い口調で注意される、大きな声で出て行けと言われるなどは起こりうることです。

 特に障害を持っている対象と接する場合や終末期にある対象と接する場合、精神科領域の実習の場合は、学生はそれを想定していないといけません。

 もちろん、教員や臨床指導者(実習病院で実習に来た学生を指導する看護師)は学生のメンタルフォローをしますが、一方で学生がいつまでも被害者意識を持っているようならば、それは注意の対象となります。

 なぜなら、先ほどの3つの例は「精神的に不安定な状況」にあり、その結果大きな声を出す、イライラしていることが症状として挙げられるからです。

 つまり、強い口調で言われたという行為に対して、看護師はケアを考え、提供していかなくてはいけないのです。患者からハラスメントを受けたなどと言っている場合ではありません。

 

精神的に不安定な状況ある対象への対応

 一例を挙げると、障害を持っている対象から強い口調で八つ当たり的に言われた時、冷静に「フィンクの危機モデル「防御的退行」の段階にある」ことに気づき、適切な精神的ケアを実施するだけでなく、本人や周囲の人の安全が守られているか考える、となるのが看護師の思考です。

 もちろん看護師も人ですから、強い口調で言われれば傷つきますし、ストレスも溜まります。しかし、そのメンタルケアは、ケアの場面ではなくそれ以外の場所で行われるものです。

 いらだつ、怒りの反応があるときは原因があり、観察を通して原因を把握する。怒りの反応が出そうだという事を予測し、予防、対応といったことの準備を整えて対象のもとに向かう。

 もちろん、これは理想論ではありますが、看護師はそのように努めていくものです。

 

精神的に負荷のかかるコミュニケーション

 このような場面は、講義で教えてあっても、実際にその場面になった時にはあまり役に立ちません。おおよそ、冷静に対処はできないと考えられるからです。

 これは、経験がものをいう最たるものだと思います。特に精神的に傷つきやすい人はなおさらです。

 しかし、これもコミュニケーションを通しての情報収集の一環です。

 このような看護師や学生側に精神的負荷がかかるコミュニケーションは、学内実習やオンライン実習ではなかなか体験させられません。

 

 精神的負荷がかかるコミュニケーションを再現したとしても、結果として学生にストレスがかかるだけでしょう。

 臨床の場面であれば、「精神的に不安定な状況」にある対象の思いを受け止め、対象が不安定な状況から脱した時や実習最終日に、対象から学生は感謝のことばを伝えられることが多いです。

 「すごく辛かった時にずっとそばにいてくれてありがとう」

 「どうにもなってしまえ、と思うほど辛かった。キツくあったってごめんね。そばにいてくれたのがあなたで良かった。ありがとう」

 こういった感謝の言葉を聞いた学生の多くはこの時に感極まって泣いてしまいますね。

 対象が「精神的に不安定な状況」にあって怒ったりや苛立ったりする、その裏にあるツラい思いに手を差し伸べる必要性やその大切さを、学生はその時実感するのだと思います。

 学内実習やオンライン実習でこの再現は無理といっていいでしょう。

 

 臨地実習でこのような体験をした学生は、見違えるほどに看護師として成長したなと感じます。明らかに、実習の前後での学生の姿勢や言動が変化します。

 自信がつく学生、勉強不足を実感する学生、看護師として働くことに覚悟が決まる学生、自分のメンタル面の強化に取り組む学生などなど。

 

看護師・看護学生を育てるのは患者さん

 以前から看護師や看護学生を育てるのは、患者さんにどれだけ本気で向き合ったかの経験だと考えていましたが、実際の患者さんがいない実習を実施していると、なお実感します。

 

それでは、(来年度の)看護師国家試験の合格を祈って!