看護研究を体験できずに卒業
こんにちは、エートスです。
卒業していく3年生に対して、看護教員として心残りはいくつもありますが、その一つに看護研究があります。
今年度の卒業生は新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受けて、臨地実習にほとんど行けず、例年行っているケーススタディの作成ができませんでした。
結果として、ケーススタディとしてレポートをまとめた経験がないことが心配です。
学校で出されている課題として書くレポートと、看護研究の一つとして書くレポートは経験値として全く違います。
- 研究目的の絞り込み
- 検索エンジンを用いた文献検討
- 執筆規定に従った記述
- 引用文献を用いた記述
- 繰り返し行われる教員からの指導
何と言っても、求められる質が普段の課題レポートとは違います。
研究目的の絞り込みでは、なぜこれをテーマにしたのか、何を明らかにしたいのかと繰り返し教員に質問をされます。
初めて研究目的の絞り込みをする学生は、テーマ設定理由の深堀りにだいたい面喰らいます。
実際の研究でも、リサーチクエスチョンは最も頭を悩ませるところですから、初めての時に苦労するのは当然でしょう。
検索エンジンを用いた文献検討では、用いる文献の妥当性、信憑性といった側面まで求められることになります。
学生は教員から調べなさい、と指示されるとすぐにスマートフォンを取り出して、ネット検索の情報を使って回答してきます。
しかし、教員から調べたネットの情報は信頼できるのかと問われ、普段の調べる方法が教員によって否定されるので、この部分でも困惑することになります。
研究に用いられる文献は査読を受けていることを前提条件とし、そうでない文献は信用がありません。
執筆規定も普段のレポートとは異なり、フォント、書体、一行の文字数、1ページの段数が全て指定されている事が普通です。
引用文献の書き方にも種類があります。また引用文献は、著作権法という法律がありますから、「忘れていました、ごめんなさい」は通用しません。
教員から繰り返し指導が入る事で、研究文章はブラッシュアップされていきます。
レポートは、文字数やテーマが合っていれば、一度出したものはそうそうやり直しはさせられません。
数ヶ月から半年以上と長い時間をかけて、何度も指導を受けてやり直しをします。
臨地実習や国家試験対策と併せて行っていく多重課題の中でケーススタディ等の看護研究を完成させることは、大変な苦労でしょうが、それだけの価値を学生に体験してもらうことができます。
臨床に出たら、2年目〜3年目には臨床研究が待っています。忙しい中時間を作って進める臨床研究も大変です。
看護専門学校時代に、ケーススタディであっても一度は研究を行なうという体験ができなかったのは、送り出す教員としては、不安が残ります。
さて、今日のテーマでいつもの終わり方は似つかわしくないのですが…
それでは、看護師国家試験の合格を祈って!